ある陸軍准尉の手記を借りる機会を得た。 昭和11年、陸軍二等兵として入営し、 伍長勤務上等兵(相当優秀でないとなれない)、 支那大陸での戦闘を経て南方戦線へ、 昭和18年には陸軍准尉にまでなった方である。 序文を読んでいたら、全くスカッとしたので、 ごく一部分、抜粋してご紹介します。 「日本の軍閥は愚かな戦争を始め、国を滅亡に 陥れたという考え方は、日本が敗北したという 事実をつきつけられて、はじめて出て来たもの であろうし、もしも勝っていたなら、 『開戦してもよかった』という全く逆の考え方も 出て来るにちがいないところである」 「アメリカの正義人道とは一体何か? 十数年に及ぶベトナム戦争を見れば、 いかなるものかわかるであろう」 「南京城攻撃に参加、城外に五日滞在した。 あの大量虐殺事件が何日何処であったか 私は見も聞きもしなかった。実に不思議である。 勝者が敗者を裁く事は容易である。このことは 昔偉人が言った『道義はより大きい大砲を持つ者につく』と 言うことであろうか」 「太平洋戦争を単に軍閥の愚かさによる敗北であると 安易にきめつける考え方は「歴史の教訓」を無駄にした。 それこそ極めて愚かなものであると言わざるを得ない」 「戦争中の総ての事を、ただ悪夢としてのみ しりぞけることは出来ない。 思想の面からは勿論、その他あらゆる面から 『深い教訓』を汲みとることが、戦死者の冥福を 祈るよすがとなるのではなかろうか」 たたき上げというと、軍人精神の塊のような イメージをつい持ってしまうけれど、 この方は絵が非常に上手で、文章にも 知性が感じられる。 気性の荒い人が勢いにまかせて書いたものではない。 兵士の軍人の手記で、アメリカの正義に 疑問を呈するような内容をはっきり書いているのも ちょっと珍しい。 良い本をお借りすることができました。